バンクシーは、噂に違わずカッコよかった。
Web版 美術手帖で『バンクシーを盗んだ男』が
シネ・リーブル梅田で上映されるという記事を発見。
「バンクシーってストリート・アートのイケてる感じ人でしょ?
確か花を投げ入れようとしてるやつ・・・(それしか浮かばない)」くらいの
浅い知識しかなかった(ほんと浅い)んですが、
世界のバンクシーを見に行かない理由もなく。
早々にネットでチケット予約して翌日見に行きました。
▼映画のあらすじ
ロンドンを中心に世界中で神出鬼没な活動を展開する正体不明なグラフィティアーティストのバンクシーと、数千万円~1億円という超高額で取引される彼の作品が人びとに及ぼす影響力に肉迫したドキュメンタリー。パレスチナ・ヨルダン西岸地区にあるベツレヘム。紛争地区に指定されているその場所にはパレスチナとイスラエルを分断する高さ8メートル、全長450キロを超える巨大な壁が存在する。その壁にバンクシーが描いた「ロバと兵士」の絵は、パレスチナの住民たちの反感を買い、絵が描かれた壁はタクシー運転手のワリドによってウォータージェットカッターで切り取れてしまう。ワリドはその壁画をオークションに出品し、最高額の入札者への売却を試みるが……。ナレーションをミュージシャンのイギー・ポップが務める。
▼映画の予告編
▼『バンクシーを盗んだ男』をみて。(※ネタバレあり)
感想としては、見ておいても損はしないドキュメンタリー映画でした。
本編は、バンクシーの描いた「ロバと兵士」を中心に話が展開していきます。
バンクシーの壁画の中で、
パレスチナ人=ロバと捉えかねない「ロバと兵士」の絵が
唯一パレスチナの住民から強い反感を買ってしまいます。
そしてその絵を、
タクシー運転者のワリド・ザ・ビースト(すごい名前w)たちが
ストリート・アートの占有権を逆手にとって、
壁ごと切り取りオークションにかけてしまったのです。
もちろん、いくら反感を買ったといえど、世界のバンクシーの絵。
それはそれは高額な値段がつくだろうと誰もがそう予想していました。
ところがどっこい、そうはいかなかったのですね。
今回出品された「ロバと兵士」は
コンテクストがしっかり紐づいた作品だったので、
分離壁から切り取って綺麗な美術館に飾るなんてしちゃったら、
価値が愕然と下がっちゃうんですね。
なので、オークションにかけたとて、
最低価格にも達することなく、
いつのまにやら最後は作品の所在すら不明に、という結末。。。
なんとも皮肉な話ですね。笑
私はこの映画を通じて、
単なるストリート・アートに留まらない
サイトスペシフィック・アートを作り出すバンクシーの作品の強さ。
虚しさいっぱいのワリドの表情を通じて、
それをまざまざと見せられたように感じました。
アート自体のコンテクストと現実世界におけるコンテクストの隙間を
バンクシーの作品がくぐり抜けていくような軽快さも
私はカッコいいなと思います。
本人一切出てこないのに、すごいなとw
▼『バンクシーを盗んだ男』は痺れる台詞も印象的(※ネタバレあり)
個人的に、痺れるセリフが随所にあったのも、
この映画の印象的なポイントでした。
なかでも印象的だった2つの台詞をご紹介します。
「ここが、アーティストにとって最高のキャンパスになる」
ここ、とは分離壁のこと。
セキュリティ・フェンス」として建設した分離壁は、
パレスチナにとってあまりにも差別的で屈辱的、圧倒的な弾圧を与えました。
しかし、この壁を
「アーティストにとって最高のキャンパスになる」と捉えた
アートの世界に、個人的にはただ単純に痺れました。
予告編にもありますが、バンクシーのいった
「この壁は世界最大のアートになる」の言葉も、かっこいい。
日本では起こりえない発想だろうなぁ。。。と。
こういった政治的、宗教的な問題と相性良いのがアートだと思うんですが、
日本では全くといっていいほど、こういう表現は流行らないですね。。。
「壁画が壁の価値を上回ったら、壁はなくなるだろう」
現代アーティストのロン・イングリッシュの言葉もいかしてましたね。
分離壁は、建設総工費・維持費共に莫大な資金を投資しており、
総工費は10億ドル以上、
維持費にいたっては年額2億ドル以上かかっているそうです。
でも、この壁に描かれた絵が、それを超える価値になれば
壁なんていらなくなっちゃうわけですよね。
この莫大な価値を覆すには、確かにアートしか可能性がないかも。
早くそういう日がやってきてほしいなぁ。。。
みなさんも興味があれば、ぜひ見に行ってみてくださいね。